150 years of hamada : ten

【 天 】
天の
恵みを醸す

薩摩の人々の命を繋ぐ「天の恵み」

鹿児島県本土の52%を占めるシラス台地は、火山の大噴火と火砕流によってできた、白砂のように白っぽい砂礫の台地です。有機物をあまり含まない土地は痩せて水持ちも悪く、稲作はもとより、畑作も容易ではありませんでした。この不毛の地でかろうじて収穫できたのが、シラス台地の三大作物と呼ばれるサツマイモ、大豆、菜種です。なかでもサツマイモは貴重な主食として薩摩の人々の命を繋ぐ、まさに「天の恵み」でした。
サツマイモは鮮度が命です。とくに焼酎用品種の約9割を占めるコガネセンガンは、非常にナイーブで扱いに神経を使います。66年に命名登録されたコガネセンガンは、でんぷん含有率の高い優良種ですが、貯蔵性にはやや劣るため掘り溜めができません。そこで濵田酒造では、1970年に入ってから生産農家と連携し、掘り取りから工場搬入までの時間を大幅に短縮。さらに洗浄後は「イモ選別」を行い、新鮮なサツマイモを一つずつ目で確かめながら、「イモ傷み臭」の原因となる傷んだ箇所を包丁で丁寧に切り落とすことで品質が格段に向上しました。

数度の焼酎ブームを経て、芋焼酎の人気はぐんと高まりました。幅広い愛飲家の獲得で味や香りも多彩になり、ブレンド技術もさらに高度な領域へと向かいます。
サツマイモが鹿児島に根づいて約300年。「薩摩焼酎」はついにウイスキーの「スコッチ」やワインの「ボルドー」と並ぶ産地指定(地理的表示)の世界ブランドの仲間入りを果たしました。

※「薩摩焼酎」というWTOの認証マークは、原料のサツマイモが鹿児島県産のものだけに与えられる。

  • 【写真】「サツマイモはシラス台地でも育つ」と言われたのは昔の話。土づくりに始まる日々の丹念な仕事が、焼酎の味わいを左右する。

  • 【写真】「イモ選別」の工程。手仕事に頼るところが多く、サツマイモも大きくなると切り分けるだけでなかなかの力業である。

  • 【写真】不揃いのサツマイモを扱う選別だけは自動化が難しく、集中力に長けた人材に頼るしかない。