150 years of hamada : ten

【 天 】
天の
恵みを醸す

熟練の蔵人が見守る45時間におよぶ製麹

米や麦などの麹原料を蒸した後に「種麹」をまぶし、麹菌(カビ)を生育させて麹にする工程を製麹(せいぎく)といいます。
麹菌の重要な役目として、原料のでんぷんを糖化したり、たんぱく質をアミノ酸に分解する各種酵素を生成することや、雑菌繁殖を抑え腐造(ふぞう)を防ぐ働きのあるクエン酸を生成することがあります。この二つの働きが温暖な鹿児島での焼酎造りには欠かせません。しかし、麹菌が糖化酵素を活発に増やすのが40℃程度という高温であるのに対し、クエン酸を多く生成する温度帯は35℃程度とやや低いため、蔵人による細やかな温度管理が不可欠です。伝兵衛蔵においては、電熱線を配した保温性の高い麹室に人為的な温度調整を施し、45時間におよぶ製麹を見守ります。

【写真】蔵人は室温が40℃前後に保てる麹室で、蒸米が固まりにならぬよう丹念にほぐし麹菌の好ましい生育環境を黙々と整えていく。

仕上がった麹に、水と焼酎酵母を加えて甕(かめ)の中で発酵させるのが「一次仕込み」です。酵母が増えて発酵が盛んになると温度も上がるため、冷却器を沈めて加熱を防ぎ、攪拌棒で混ぜて温度ムラをなくすことで性状を均一に保ちます。これが数日するとアルコール度数15%前後の「一次醪(もろみ)」となります。
甕で6日ほど発酵させて焼酎酵母が十分育つと、糖をアルコールに変える力も備わり、いよいよ「二次醪」の準備に移ります。別の甕に移してさらに水を足し、蒸煮したサツマイモを細かく粉砕して投入します。
二次醪においてもやはり温度管理が要となります。微生物たちの発酵は外気温に大きく影響されるため、仕込み蔵は変化の少ない環境が好まれます。一般的な仕込みの割合は麹米1に対してサツマイモが5。酵母が活発なほど、アルコール発酵する力も強くなります。うっかり高温になれば焼酎酵母がみるみる死滅してしまうため、蔵人は最高品温が35℃を超えないように目を光らせ、万全を期します。仕込んで3日ほどは、炭酸ガスの細やかな泡がプツプツと、醪の表層まで艶やかに湧き上がってくる様子が見られます。こうしてアルコール度数が13~14%に近づく頃には発酵も徐々に収まり、醸造を支えたすべての微生物たちは、美酒だけを残して役目を終えます。

【写真】仕込みに使う甕に水を足す際には、正確な検量が行われる。

  • 「金山蔵」用に復活させた黄金麹

  • 黄麹

  • 黒麹

  • 白麹